安寧とは

新しい元号が始まりました。「平成に代った時は自粛ムードだったけれど、今回はお祝いの気持ちがあって良いよね」と言う方が多いのではないでしょうか。
平成天皇の最後のご挨拶は
【 即位から三十年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。
 明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。 】
 というお言葉でした。両陛下が「国民への深い信頼と敬愛」を胸にしっかりと抱いて努めてこられたことは、私たちにとっても幸せなことでした。
世界が先の大戦の悲惨さや失ったものの大きさを忘れ、その時に得た平和のありがたみを放棄し、分断と憎しみと怒りという負のエネルギーによって動かされようとしているとき、一人の尊い魂の叫びが発せられ、「安寧と幸せ」に光が当てられる。そして、その声に突き動かされる人が少しでも立ちあがろうとするならば、同じ思いを共有する人たちの絆は結び直されるチャンスを得ます。 
釈尊はシャカ族が滅ぼされようとするとき、刀や槍をもって立ち上がりませんでした。王となって、軍隊を指揮をすることもしませんでした。殺し殺されることによって、現世でも来世でも大きな大きな痛みをお互いが抱えるからです。私たちが簡単に真似できることではありませんが、釈尊はその道を選びました。安寧と幸せは破壊からは得られません。どこまでも「お互い様」「ありがとう」という心を行いで示すしかないのです。辛い道を、勇気をもって法を灯りとして自らを灯りとして歩むしかないのです。
仏教徒であり、真に天皇陛下を敬愛する人は静かにその道を歩みます。


2019/4/30